127.新府城 その3

城と館の複合体だったのでしょうか。

特徴

これもまた謎の出構

最後に、城の北側部分でに残る出構をご覧になってはいかがでしょう。山側から2つの土手が突き出す構造になっていて、この城独特のものです。歴史家は、これが鉄砲の陣地として使われたのか、堀の中の水量を調整するために使われたのか思案しています。このようなものは他の城には見られないので、答えは見つかっていません。

城北側の地図

西出構
西出構の上
出構の周りは水堀でした
東出構

その後

新府城跡は、1973年に国の史跡に指定された後に整備されました。韮崎市は、城跡の公有地化を進め、現在では98%が公有地となっています。また、韮崎市は1988年に城跡の発掘を、2005年には史跡としての整備を始めました。そのため、現在いつでもこの城跡を訪れ、見学できるようになっているわけです。

馬出し跡
本丸
出構

私の感想

私は、新府城は、その以前に武田氏館と要害山城が組み合わされたように、城と館の複合体であったと思うのです。要害山は、武田氏館の周辺で戦いが起こったとき、緊急のために使われる山城でした。新府城は、先の2つの城が混合されたものだったのです。そのため、ある人にとっては、館として映ってしまうのではないでしょうか。しかし、新府城は少ない兵士によって守るには大きすぎました。織田信長の軍勢がこの城に向かっていったとき、武田勝頼のほとんどの家臣は降伏するか、勝頼の下から去っていきました。勝頼は、彼らだけでこの城を守るのは不可能だと認識したのでしょう。新府城はその潜在能力を発揮することはなかったのです。

武田氏館の想像図(現地説明板より)
要害山 (licensed by さかおり (talk via Wikimedia Commons)
新府城跡の模型(韮崎市民俗資料館)

ここに行くには

車で行く場合:
中央自動車道の韮崎ICから約10分のところにあります。
城跡の東側を通る山梨県道17号線沿いに駐車場があります。
電車で行く場合は、JR中央線の新府駅から歩いて10分程のところにあります。
東京から新府駅まで:新宿駅から特急あずさ号かかいじ号に乗り、甲府駅で中央線に乗り換えてください。

山梨県道17号線
駐車場から見た新府城跡

リンク、参考情報

新府城跡、韮崎市
新府城跡、韮崎市観光協会
・「歴史群像135号、戦国の城 甲斐新府城」学研
・「列島縦断「幻の名城」を訪ねて/山名美和子著」集英社新書
・「新府城と武田勝頼」新人物往来社

これで終わります。ありがとうございました。
「新府城その1」に戻ります。
「新府城その2」に戻ります。

127.Shinpu Castle Part2

You can see the completed version of Takeda’s method for building castles.

Features

The ruins of Shinpu Castle is open to the public. Visitors usually enter the ruins from the eastern side using two trails which were either built in the present time. One of them is the very steep approach with stone steps to the shrine on the top of the mountain. The other is the gentle steep footwalk going around the mid slope of the mountain to the south. I recommend using the latter if you want to look around the ruins.

The approach to the shrine
The footwalk for visitors

Powerful ruins of Main Gate and Umadashi system

The footwalk goes under the Third Enclosure above the Main Gate. You can walk down from the inside to the outside of the ruins of the gate. The gate ruins are still surrounded by the earthen walls.

The map around the castle

The ruins of the Main Gate

The ruins of the Umadashi system remain outside the gate. Umadashi was Takeda’s unique defense system which is a round shaped stronghold sticking out of a gate. It usually had a convex moon shaped moat in front of it to make it more protective. The defenders could also counter the attackers from the sides. The ruins of Umadashi in Shinpu Castle are very large and you can clearly see the shapes of the stronghold and the moat.

The imaginary drawing of the Umadashi part (from the signboard at the site)
The round shaped stronghold of Umadashi
The convex moon shaped moat of Umadashi
The side part of the stronghold

Main Enclosure which worships Takeda

Going back to the footwalk, you can walk up to the Main Enclosure through the Second Enclosure. The Main Enclosure is largest one and on the top of the mountain, which had Katsuyori Takeda’s Main Hall. The excavation team recently found the foundation of the hall gate and the traces of the leveling probably done by Tokugawa.

The Main Enclosure of Shinpu Castle

The only things that remained was the Shinpu-Fujitake Shrine which worships Katsuyori and the shrine which worships the war deaths in the battle of Nagashino on the spacious area.

The Shinpu-Fujitake Shrine
The steep approach that can be seen from the shrine
The shrine which worships the war deaths in the battle of Nagashino

You can see a good view from there including the Kamanashi-gawa River below and the mountains above.

A view from the Main Enclosure

Also pay attention to Back Gate

You can also walk down to the northern part of the castle from the Main Enclosure. Passing the ruins of the well and the wooden bridge, you will reach the ruins of the back gate called Inui-Mon.

The map of the northern part of the castle

the ruins of the well
The ruins of the wooden bridge
The imaginary drawing of the wooden bridge (from the signboard at the site)

The gate was built in the Masugata style which had a square space sandwiched by two gate buildings, which could prevent enemies from attacking easily. The earthen walls surrounding the space still remain intact and the foundations of the gate were also found.

The ruins of the Back Gate
The Masugata space which is surrounded by the earthen walls

To be continued in “Shinpu Castle Part3”
Back to “Shinpu Castle Part1”

127.新府城 その2

武田流築城術の集大成を見学できます。

特徴

新府城跡は一般に公開されています。観光客は通常、東側から2つの山道を通って城跡に入っていきますが、両方とも現代に作られたものです。一つは山の頂上にある神社に向かう参道の石段で、とても急です。もう一つは、山の中腹を南側に回り込む緩やかな坂の歩道です。城跡を見て回るのであれば、後者の方をお勧めします。

神社に向かう参道
観光客用の歩道

迫力ある大手門と馬出し跡

歩道は三の丸の下、大手門の上のところを進んでいきます。門跡の内側から外側に歩いて行けます。門跡はまだ土塁に囲まれています。

城周辺の地図

大手門跡

門の外側には馬出しの跡が残っています。馬出しは武田独特の防御の仕組みで、門の外側に丸い形の陣地が突き出しているものです。通常は三日月形の堀が前面にあり、より防御力を増していました。また、防御側は側面から反撃に出られるようになっていました。新府城の馬出し跡はとても大きく、陣地や堀の形をはっきりと見ることができます。

馬出し部分の想像図(現地説明板より)
馬出しの丸い陣地部分
馬出しの三日月堀部分
馬出し陣地の側面部分

武田を祀っている本丸

歩道の方に戻ると、二の丸を経由して本丸に登っていきます。本丸は一番大きな曲輪で山の頂上にあり、武田勝頼の御殿がありました。発掘により、館の門の基礎と、恐らく徳川によりそれが埋められた痕跡が見つかりました。

新府城の本丸

現在この広いスペースにあるのは、勝頼を祀る新府藤武神社と長篠の戦いの戦死者を祀る霊社だけです。

新府藤武神社
神社から見る急坂の参道
長篠の戦いの戦死者を祀る霊社

本丸からは、上方には山々の、下方には釜無川の素晴らしい景色が見えます。

本丸からの景色

搦手門跡にも注目

本丸からは、城の北側部分に下って行くことができます。井戸跡と木橋跡を過ぎると、乾門と呼ばれた搦手門跡に着きます。

城北側の地図

井戸跡
木橋跡
木橋の想像図(現地説明板より)

この門は桝形形式で作られ、二つの門の建物が、四角い空間を挟んでいて、敵の攻撃を防げるようになっていました。土塁が今もその空間を囲んで残っていて、門の基礎部分も見つかっています。

搦手門跡
土塁に囲まれた桝形

「新府城その3」に続きます。
「新府城その1」に戻ります。