102.上ノ国勝山館 その2

中世都市と同居した山城

特徴、見どころ

海岸側、山側どちらからでもアクセス可能

現在、上ノ国勝山館跡は上ノ国町によってよく整備されています。館跡は、丘の上の標高70mから110mの一帯に広がっています。館跡には、海岸に近い方の大手口からでも、標高159mの夷王山に近い方の搦手口双方からアクセスすることができます。

城周辺の航空写真

大手口

もし館跡まで車で行かれるようでしたら、その前に山頂下にある勝山館跡ガイダンス施設に車を停めて、まず施設を訪れてみるのがいいかもしれません。そこには、館に関する歴史を学んだり、発掘調査により発見された遺物を見学することができます。程近い山頂まで登ってみると、素晴らしい海原の景色が見れますし、館の創始者である武田信広を祀った夷王山神社があります。この山頂部分は館にとっても、いざというときのための詰めの場所としても使われていました。

勝山館跡ガイダンス施設
ガイダンス施設の館内
駐車場から見える夷王山山頂
頂上からの眺め
夷王山神社の鳥居

山側から搦手口、裏門へ

ガイダンス施設からは、600以上の墳墓がある夷王山墳墓群を通り過ぎて、館の裏門の方に歩いて行きます。墳墓のうちの多くは、本州出身の和人に関係する仏教様式のものですが、いくつかはアイヌ人の様式によるものです。このことが、館において和人とアイヌ人が一緒に暮らしていた根拠の一つになっているのです。武田信広も、これらの墳墓群の一帯のどこかに葬られていると考えられています。

夷王山墳墓群
アイヌ人墳墓の発掘状況のレプリカ、勝山館跡ガイダンス施設にて展示

ルートに沿って歩いていくと、その手前に空堀がある裏門跡に至ります。復元された橋を渡って空堀を越えていきますが、その周りには木柵も復元されています。この門の周辺が館跡では最高地点になっていて、かつては館神八幡宮(たてがみはちまんぐう)があり、館の守護神になっていました。この神社は、館が廃された後もしばらくは残っていました。江戸時代の間、松前藩の歴代藩主がここを訪れ、祖先たちを崇拝していました。明治時代の1876年になってから、他の場所に移されました(大手口近くにある上ノ國八幡宮)。

裏門跡
空堀と復元された搦め手橋
館神八幡宮跡
八幡宮跡地周辺

館跡の中心部分

幅3.6mの中央通路が館跡を貫いています。進んでいくと次は館の中心部です。長く且つ幅広な区域で、大手門跡に向かって緩やかに下っています。

館跡の中心部分
中央通路の想像図、櫓門が立っていたと考えられています、現地説明板より

ここには建物はありませんが、発掘の成果をもとに、ここにはどんな建物があったのか説明板がたくさんあります。客殿、城代の住居、馬屋、鍛冶工房、共同井戸、倉庫、住居などです。

客殿、城代の住居、馬屋の想像図、現地説明板より
客殿跡
客殿の内装模型、勝山館跡ガイダンス施設にて展示
鍛冶工房跡
鍛冶工房内部の模型、勝山館跡ガイダンス施設にて展示
井戸跡
共同井戸の模型、勝山館跡ガイダンス施設にて展示

また、発掘では10万点を超える遺物が見つかっています。武器、宗教具、貿易品、工具、狩猟具、漁撈具、装飾品を含む生活用品などです。つまり、人々がここで日常生活を送っていたわけです。特にそのうちのいくつかは、特徴ある小刀(マキリ)や狩猟のための毒矢など、アイヌ人に関わるものです。これもまた、和人とアイヌ人が一緒に生活していた証拠となるでしょう。ここからも日本海と海岸地域の景色がよく見えます。

館跡で出土した漆器椀、交易によって持ち込まれたと考えられています、勝山館跡ガイダンス施設にて展示
館跡で出土したアイヌ人の漁撈具(下)と、アイヌ人の銛のレプリカ(上)、勝山館跡ガイダンス施設にて展示
館跡と下界の景色

「上ノ国勝山館その3」に続きます。
「上ノ国勝山館その1」に戻ります。

3.Matsumae Castle Part3

Will the Main Tower be rebuilt or repaired?

Features

Northern and Western parts of Castle

If you have time, you should consider walking around the other sides of the castle ruins. The temple district is beside the Outer Moat Ruins at the northern side of the castle. It had originally been built for the defense of this side when the site had only the hall. However, this side eventually became the weakest point compared with the other sides of the castle. That’s why the former Shogunate Army was able to attack it. You can now enjoy a relaxing walk there seeing some of the temple buildings which were designated as Important Cultural Properties.

The map around the castle

The Outer Moat Ruins at the northern side of the castle
The main gate of Hogenji Temple as an Important Cultural Property
Ryuunin Temple as an Important Cultural Property

The western side is a promenade on the bottom of the former Outer Moat. You can walk on it by looking up at the Main Enclosure. This side is supposed to be more defensive than the northern side.

The promenade on the bottom of the former Outer Moat
You can see how tall the Main Enclosure is
Looking up at the Main Enclosure

Later History

After the Meiji Restoration, Matsumae Castle was abandoned and only the Main Tower and the gate in the Main Enclosure remained as the ruins. However, the tower was unfortunately burned down by an accidental fire in 1949. It was externally restored in 1961, but since it’s been 60 years, its concrete building looks old. So, Matsumae Town is considering whether the tower should be rebuilt in the original way or repaired including safety measures such anti-earthquake systems. In addition, the castle ruins have been designated as a National Historic Site since 1935.

The Main Tower of Matsumae Castle before being burned down, taken in 1935  (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)
The restored Main Tower
The Main Tower building looks aging when you see its interior

My Impression

I think Matsumae Castle is a very unique one which has a mix of the traditional Japanese style and a newer advanced style which matches the current situation. As a result, it may have been not enough as the castle was defeated twice. However, it must also be preserved as a record of history. In my opinion, the best season for visiting it should be spring with cherry blossoms, but be aware that there will be a huge crowd as well. Cherry Blossom season is a popular time for locals as well as tourists, so expect more people than usual.

The Man Enclosure Gate in the front and the Main Tower in the back
The Man Enclosure Gate on the left and the Main Tower on the right
hydrangea blooming is also good

How to get There

I recommend using a car when you visit the castle ruins because there are only a few buses available.
It is about a 2-hour drive away from Shin-Hakodate-Hokuto Station or the center of Hakodate City. From Hakodate Airport, it takes about 2.5 hours to get there. There is a parking lot in the castle ruins. It may be a good idea to rent a car at the station or the airport.
To get to Shin-Hakodate-Hokuto Station from Tokyo: Take the Hokkaido Shinkansen super express at Tokyo Station.

That’s all. Thank you.
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3.松前城 その3

天守の木造再建の是非が議論されています。

特徴、見どころ

城の北側と西側

もしお時間があれば、城跡の他の部分にも足を延ばしてみてはいかがでしょうか。寺町地区は、城の北側の外堀跡に沿った場所です。この地区そのものが元はここに御殿しかなかったときに、北側の防衛のために設けられたものです。ところが、そのうち城ができたときには他の方角と比べて、一番弱い場所になってしまいました。そのため、旧幕府軍はこちら側から攻撃をかけたのです。現在ではここはゆっくり歩ける場所になっていて、寺の建物のいくつかは重要文化財に指定されています。

城周辺の地図

城の北側の外堀跡
法源寺山門(重要文化財)
龍雲院(重要文化財)

城の西側は、以前外堀の底だった場所が遊歩道になっています。本丸を見上げながら、歩いていくことができます。こちら側は、城の北側よりは守りが固いように思えます。

外堀の底の遊歩道
本丸の高さを実感できます
本丸を見上げています

その後

明治維新後、松前城は廃城となり、本丸にある天守と門だけが史跡として残されました。ところが残念ながら、1949年に失火により天守は焼け落ちてしまいました。そして1961年には外観復元されたのですが、それから60年が経過し、コンクリート造りの建物としては老朽化しています。松前町は、天守を木造のオリジナルの工法で再建するか、それとも耐震基準などの安全対策を講じて修繕を行うのか検討しているところです。なお、城跡自体は1935以来国の史跡に指定されています。

焼失前の松前城天守、1935年   (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)
復元された天守
内部から見ると老朽化がわかります

私の感想

松前城は、伝統的な日本式と、築城当時の状況に即して進んだ様式がミックスされた、とてもユニークな城だと思います。結果的にそれが中途半端な形になってしまい、2度の落城を招いてしまったのかもしれません。しかし、歴史の記録としてそれはそれで保存されるべきです。個人的な見解ですが、ここを訪れるには桜の季節がもっとも良いでしょうが、また大変込み合うことも想像できます。桜を見るために地元の人も観光客も普段に増して押し寄せるでしょう。ですので、何を目的をするかで訪れる時期を決められたらよいと思います。

本丸御門(手前)と天守(奥)
本丸御門(左)と天守(右)
アジサイの時期もなかなか良いです

ここに行くには

この城跡を訪れる際は車を使われることをお勧めします。バスの便数がとても少ないからです。
新函館北斗駅または函館市の中心部から約2時間の道のりとなります。函館空港からであれば、2時間半くらいはかかるでしょう。城跡内に駐車場があります。駅か空港で、レンタカーを借りるのもよいでしょう。
東京から新函館北斗駅まで:東京駅から北海道新幹線に乗ってください。

リンク、参考情報

松前氏城跡福山城跡、松前町
・「よみがえる日本の城9」学研
・「日本の城改訂版第50号」デアゴスティーニジャパン
・「幕末維新の城/一坂太郎著」中公新書
デジタル八雲町史、デジタル熊石町史

これで終わります。ありがとうございました。
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「松前城その2」に戻ります。