177.引田城 その2

素晴らしい城の石垣と、城からの眺め

特徴、見どころ

現在はハイキングコースに

現在、引田城跡はハイキングコースにもなっています。山上へは2つのコースがあり、田の浦キャンプ場側登山口と引田港側登山口です。もし城跡に車で行かれるのでしたら、田の浦キャンプ場側登山口にある駐車場を使った方がよいでしょう。

城周辺の地図

引田城跡の現地案内図

山道は急ですが、山の上は比較的平らです。これは攻めにくく守り易い地形なので、山城を作るにはちょうど良かったでしょう。最初は北曲輪を通りますが、ここには石垣はありません。よって、生駒氏がここに来る前と同じ状態で残っていると考えられています。つまり、生駒氏はここを使わなかったわけです。

田の浦キャンプ場側登山口入口
上から見るとかなり急です。
北曲輪

素晴らしい北二の丸の石垣

次には、もうこの城のクライマックス、北二の丸の二段積みの石垣が見えてきます。上段は2~3m、下段は5~6mの高さがあります。合計では10m近くあることになります。上段の方は崩落を防ぐためにカバーがかけられていますが、下段の方を見るだけでも素晴らしいと感じます。

北二の丸に近づきます
北二の丸石垣の上段
北二の丸石垣下段

これらの石垣は生駒氏の時代に由来しますが、高松城丸亀城では同じ時代のものは見ることはできません。これら2つの城は生駒氏以後の他の大名により改装されたり、拡張されたりしたからです。丸亀城の山麓に残っている古い石垣のみが、生駒氏によって築かれたかもしれない程度です。

丸亀城にある古い石垣

この北二の丸には城主の御殿があったと言われており、曲輪下には大手門がありました。そのために豪華な石垣がここに築かれ、訪問者に城主の権威を見せていたのでしょう。大手門へ至る大手道は、現在は使われていません。

北二の丸の内部

素晴らしい本丸からの景色

北二の丸からは、他の曲輪は馬蹄形状に二つの方向に分かれています。一つは南にある本丸です。本丸は細長い形をしていて引田港に面しています。ここには石垣がいくらか残っていて、天守台の跡もあります。過去にはかなり目立っていたのでしょう。ここからは引田の街並みと港がよく見えます。城があった頃には引田の人々は城の建物と石垣を見上げていたのでしょう。

本丸に残る石垣
石垣から見える景色
天守台跡
天守台跡周辺から見える引田港

「引田城その3」に続きます。
「引田城その1」に戻ります。

177.Hiketa Castle Part1

The forgotten castle in the eastern part of Sanuki Province

Location and History

Castle on Mountain supporting Port

Hiketa Castle was located on an 82m high mountain called Shiro-yama in the eastern part of Sanuki Province which is the modern day Kagawa Prefecture. The Hiketa Port, facing the Harima Sea, beside the mountain which could prevent strong wind from blowing into the port. The port became popular amongst ships waiting for favorable wind from the Ancient Times. It was said that the mountain was also used as a fire beacon platform at that time. In the Middle Ages, several lords used the mountain as Hiketa Castle. For example, in 1583, Hisahide Sengoku under the ruler, Hideyoshi Toyotomi fought with Motochika Chosogabe using Hiketa Castle. Overall, the castle was used whenever it was needed. It was built with natural terrain.

The location of the castle

The aerial photo around the castle

The portrait of Hisahide Sengoku, private owned (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)

One of Important Branch Castles in Sanuki Province

During the unification of Japan, Hideyoshi gave Sanuki Province to his retainer, Chikamasa Ikoma in 1587. Initially, Chikamasa lived in Hiketa Castle, but soon after that, he moved to another one, and finally built Takamatsu Castle as his new home base. However, Hiketa Castle was maintained as one of the branch castles of Takamatsu Castle. The stone walls were built surrounding the enclosures on the top of the mountain. Part of them still remain on the mountain. They were specifically built in places where visitors often came and local people could look up from the foot of the mountain. That was the way for Hideyoshi and his retainers to show their authority to the people in their new territories. It was said that the way originated from the castles like Nobunaga Oda’s Azuchi Castle and Nagayosi Miyoshi’s Imori Castle.

The portrait of Chikamasa Ikoma, owned by Kokenji Temple (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)
Takamatsu Castle
The remaining stone walls of Hiketa Castle
The ruins of Azuchi Castle
The ruins of Imori Castle

Some castle buildings were also built on the enclosures, but the details are uncertain because none of them remained. However, it was thought that the buildings looked like those of Takamatsu Castle. That’s because the roof tiles, which were made from the same model, were excavated from both sites. That meant there might have been the three castles which had very similar appearance in Sanuki Province which the Ikoma Clan owned. They were Takamatsu Castle in the center which was their home base, Hiketa Castle in the east, and Marugame Castle, which was the other branch castle in the west. Hiketa Castle was at its peak at the beginning of the 17th Century. The castle town was also built beside Hiketa Port.

Marugame Castle

Abandoned by Law of One Castle per Province

However, Hiketa Castle was abandoned in 1615 due to the Law of One Castle per Province which was created by the Tokugawa Shogunate. Only Takamatsu Castle was allowed to be used from then on. Marugame Castle was once abandoned at the same time as Hiketa Castle. However, Marugame Castle was rebuilt when Sanuki Province was divided by other lords later on. As a result, Hiketa Castle was the only castle that had peace and quiet and stayed idle eventually becoming forgotten for a long time.

The ruins of Hiketa Castle

To be continued in “Hiketa Castle Part2”

177.引田城 その1

讃岐国東部の「忘れられた城」

立地と歴史

港を守る山にあった城

引田城は、現在の香川県に当たる讃岐国の東部分にあった、標高82mの城山に築かれた城です。播磨灘に面する引田港が傍らにあり、この山が強風が港に吹き込むのを防いでいました。この港は古代より風待ちの船により賑わいました。また、山の方も当時からのろし台として使われてきたと言われています。中世になって、何人かの大名がこの山を引田城として使いました。例えば、1583年には天下人の豊臣秀吉配下の仙石久秀が引田城を活用して長宗我部元親と戦いました。つまるところ、この城は必要の都度、使われてきたのです。その時点では自然の地形を利用した城でした。

城の位置

城周辺の航空写真

仙石久秀肖像画、個人蔵 (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)

讃岐国の重要な支城の一つ

天下統一が進む中、1587年に秀吉は家臣の生駒親正に讃岐国を与えました。当初、親正は引田城に住んでいましたが、すぐに別の城に移り、最終的には新しい本拠地として高松城を築きます。しかしながら、引田城は高松城の支城の一つとして維持されました。山の上にあった曲輪を取り囲む形で石垣が築かれました。その一部は今でも山に残っています。これらの石垣は特に、訪問者が来る場所や、山麓から地元民が見上げるような場所に築かれたのです。このやり方は、秀吉やその部下たちが新しい領地において人々に権威を見せるためのものでした。これはもともと、織田信長の安土城や、三好長慶の飯盛城で始まったやり方だと言われています。

生駒親正肖像画、弘憲寺蔵 (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)
高松城
現存する引田城の石垣
安土城跡
飯盛城跡

曲輪の上には、城の建物も築かれましたが、どの建物も残らなかったため詳細は不明です。しかし、その建物は高松城のようではなかったかと言われています。両方の城から、同じ鋳型から作られた屋根瓦が発掘されたからです。生駒氏が所有していた讃岐国にあった3つの城は似通っていたのかもしれないのです。国の中央には高松城、東側には引田城、西側にはもう一つの支城である丸亀城がありました。引田城は17世紀の初めに繁栄を極めました。引田港のとなりには城下町も設けられました。

丸亀城

一国一城令により廃城

ところが、引田城は1615年に徳川幕府から発せられた一国一城令により、廃城となってしまいます。それ以降は高松城のみが存続を許されました。丸亀城も、引田城と同じ時に一時廃城となりました。しかし、丸亀城はその後他の大名たちにより讃岐国が分割されたときに再建されました。結局引田城のみが、天下泰平のもと、使われないままとなり、長い間忘れられることになったのです。

引田城跡

「引田城その2」に続きます。