2.五稜郭 その3

弁天岬台場が残っていたとしたら・・

特徴、見どころ

五稜郭タワー

城跡そのものとは別に、五稜郭タワーにも登っていただきたいです。このタワーは高さ107mの、ほぼ五稜郭を専門に眺めるための展望台です(もちろん函館山や函館市街地もよく見えます)。五稜郭は大砲からの標的になるのを防ぐため、平面的にデザインされていて、今日のビジターからするとその形をはっきりとつかめないかもしれません。よって、エレベーターで90mの高さの展望台に登っていただくと、星形の城の形が素晴らしい景色として目に入ってきます。

五稜郭タワー
タワー内に展示されている五稜郭の模型
展望台から見た五稜郭
函館山と市街地も見えます

四稜郭跡

五稜郭に関係するもう一つの見どころは、五稜郭の北東約5kmのところにある四稜郭跡です(五稜郭の鬼門(北東)を守護する東照宮を防衛するために築かれたとも言われています)。五稜郭よりはずっと小さいですので、そこに着いてみればそのユニークな形が見て取れると思います。

四稜郭周辺の航空写真

四稜郭跡入口
端の方に立つとその形がわかります
大砲が据えられていたと思われる場所(四隅の一つ)

その後

函館戦争が終わった後、五稜郭のほとんどの建物は撤去されました。明治時代の間は、帝国陸軍が演習場として城跡を所有していました。また、堀の水は製氷のために使われ、そこで作られた氷は「函館氷」として1870年から1953年まで販売されていました。堀の水は五稜郭設立のときから亀田川から引かれていて、清涼だったからです。大正時代の1913年には函館市が陸軍省に城跡を公園として開放するよう要請し、その翌年に五稜郭公園として実現しました。

かつて製氷に使われた水堀
稜堡の先端から外側を見ています

私の感想

五稜郭とその関連の歴史を振り返ってみると、つくづく弁天岬台場の痕跡が全く残っていないのが惜しまれます。台場は完全に解体され、その石材は1899年の函館港の改修資材として再利用されました。その場所には、かつてそこに台場があったことを示す標柱が立っているだけです。東京湾の品川台場のように、もし少しでもその遺跡が残っていたとしたら、台場と五稜郭の役割分担が今の人々にもよく理解できたのではないかと思います。いずれにせよ、五稜郭が日本の城の中でも独特なスタイルを持っていることにより、日本の歴史の中でユニークな存在として記憶され続けてほしいです。

弁天岬台場跡
函館港改良工事記念碑
このどこかに弁天岬台場の石が使われているはずです

ここに行くには

車で行く場合:函館空港または函館市の中心部から約20分のところです。新函館北斗駅からは40分くらいはかかるでしょう。公園に駐車場が隣接しています。
公共交通機関を使う場合は、函館駅から湯の川行きの函館市電に乗り、五稜郭公園前駅で降りてください。そこから歩いて15分くらいで現地に着きます。
東京または大阪から函館駅まで:東京駅で北海道新幹線に乗り、新函館北斗駅駅で函館本線に乗り換えてください。

リンク、参考情報

五稜郭公園 国指定特別史跡「五稜郭跡」、函館市住宅都市施設公社
函館・五稜郭タワー
・「よみがえる日本の城9」学研
・「日本の城改訂版第4号」デアゴスティーニジャパン
・「歴史群像56号、日本初の稜堡式要塞 函館五稜郭」学研
・「幕末維新の城/一坂太郎著」中公新書
「函館市史」デジタル版

これで終わります。ありがとうございました。
「五稜郭その1」に戻ります。
「五稜郭その2」に戻ります。

102.上ノ国勝山館 その3

この城跡は長い旅をするだけの価値があります。

特徴、見どころ

防御の要、大手門

そして、館の主要部分の端にあたるのが大手門跡です。一旦その門跡の外側に出てみると、大手門の辺りがいかに守られていたのかがわかると思います。もう一つの曲輪が門の前にあり、長く深い空堀によって隔てられています。その空堀は二重に掘られていて、そこを渡るには小きい橋と大さい橋2つを渡る必要があります。それらの端はクランク状に渡されていて、敵が館を攻めてきた場合には、ここで滞ってしまうでしょう。門跡の周りには厚く高い土塁と、その上の木柵が復元されています。ここから守備兵が敵に対して矢を放ったりして反撃していただろうと想像できます。

大手門跡に到着
大手門跡を外側から見ています
クランク状に渡されている2つの橋
大手門周辺の土塁と木柵
上ノ国勝山館の大手門周辺の様子、勝山館跡ガイダンス施設にて展示されている模型より

その後

上ノ国勝山館跡は、江戸時代の間も松前藩の先祖崇拝の場であり続けました。城跡としては1977年に、道南十二館の一つである花沢館を含む「上ノ国館跡」として国の史跡に指定されました。その後、1979年以来発掘調査が続けられています。そのため、本州の和人とアイヌの人たちとの関係が明らかになったのです。

上ノ国勝山館の模型、勝山館跡ガイダンス施設にて展示
大手門跡

私の感想

上ノ国勝山館は、単なる館というのではなく、まさに城あるいは中世都市といってもよいでしょう。これは、本州から蝦夷に来た人たちが築いた館の到達点と言うべきものです。この場所はまた、和人とアイヌの人たちが共に暮らした独特の生活様式を生み出しました。ここに行くのには随分と時間がかかりますが、それだけの価値がある城跡としてお勧めできます。

勝山館跡ガイダンス施設から見た夷王山墳墓群
馬屋跡

ここに行くには

この城跡を訪れる際は車を使われることをお勧めします。バスの便数がとても少ないからです。
新函館北斗駅からは約70kmの道のりとなります。函館空港や函館市の中心部からであれば、約90kmくらいでしょう。勝山館跡ガイダンス施設に駐車場があります。駅か空港で、レンタカーを借りるのもよいでしょう。
東京から新函館北斗駅まで:東京駅から北海道新幹線に乗ってください。

勝山館跡ガイダンス施設の駐車場

リンク、参考情報

史跡上之国館跡 勝山館跡(国指定史跡)、上ノ国町
・「かみのくに文化財ガイドブック」上ノ国町教育委員会
・「日本の城改訂版第63号」デアゴスティーニジャパン
・「逆説の日本史17 江戸成熟編 アイヌ民族と幕府崩壊の謎/井沢元彦著」小学館
・「海峡をつなぐ日本史」北海道・東北史研究会
デジタル八雲町史、デジタル熊石町史

これで終わります。ありがとうございました。
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3.松前城 その3

天守の木造再建の是非が議論されています。

特徴、見どころ

城の北側と西側

もしお時間があれば、城跡の他の部分にも足を延ばしてみてはいかがでしょうか。寺町地区は、城の北側の外堀跡に沿った場所です。この地区そのものが元はここに御殿しかなかったときに、北側の防衛のために設けられたものです。ところが、そのうち城ができたときには他の方角と比べて、一番弱い場所になってしまいました。そのため、旧幕府軍はこちら側から攻撃をかけたのです。現在ではここはゆっくり歩ける場所になっていて、寺の建物のいくつかは重要文化財に指定されています。

城周辺の地図

城の北側の外堀跡
法源寺山門(重要文化財)
龍雲院(重要文化財)

城の西側は、以前外堀の底だった場所が遊歩道になっています。本丸を見上げながら、歩いていくことができます。こちら側は、城の北側よりは守りが固いように思えます。

外堀の底の遊歩道
本丸の高さを実感できます
本丸を見上げています

その後

明治維新後、松前城は廃城となり、本丸にある天守と門だけが史跡として残されました。ところが残念ながら、1949年に失火により天守は焼け落ちてしまいました。そして1961年には外観復元されたのですが、それから60年が経過し、コンクリート造りの建物としては老朽化しています。松前町は、天守を木造のオリジナルの工法で再建するか、それとも耐震基準などの安全対策を講じて修繕を行うのか検討しているところです。なお、城跡自体は1935以来国の史跡に指定されています。

焼失前の松前城天守、1935年   (licensed under Public Domain via Wikimedia Commons)
復元された天守
内部から見ると老朽化がわかります

私の感想

松前城は、伝統的な日本式と、築城当時の状況に即して進んだ様式がミックスされた、とてもユニークな城だと思います。結果的にそれが中途半端な形になってしまい、2度の落城を招いてしまったのかもしれません。しかし、歴史の記録としてそれはそれで保存されるべきです。個人的な見解ですが、ここを訪れるには桜の季節がもっとも良いでしょうが、また大変込み合うことも想像できます。桜を見るために地元の人も観光客も普段に増して押し寄せるでしょう。ですので、何を目的をするかで訪れる時期を決められたらよいと思います。

本丸御門(手前)と天守(奥)
本丸御門(左)と天守(右)
アジサイの時期もなかなか良いです

ここに行くには

この城跡を訪れる際は車を使われることをお勧めします。バスの便数がとても少ないからです。
新函館北斗駅または函館市の中心部から約2時間の道のりとなります。函館空港からであれば、2時間半くらいはかかるでしょう。城跡内に駐車場があります。駅か空港で、レンタカーを借りるのもよいでしょう。
東京から新函館北斗駅まで:東京駅から北海道新幹線に乗ってください。

リンク、参考情報

松前氏城跡福山城跡、松前町
・「よみがえる日本の城9」学研
・「日本の城改訂版第50号」デアゴスティーニジャパン
・「幕末維新の城/一坂太郎著」中公新書
デジタル八雲町史、デジタル熊石町史

これで終わります。ありがとうございました。
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